
「店をたたむことにしたが、ホームページはどうすればいいのか」
「もう使っていないのに、毎年いろんな引き落としがある」
廃業や店じまいを決めた方から、こういうご相談をいただいたことがあります。
作るときの話はどこにでも載っていますが、閉じるときの話はほとんど出てきません。
東京商工リサーチの調査では、2025年の「休廃業・解散」は6万7,210件で過去最多でした。
代表者が60代以上の割合は90.6%、80代以上だけで34.0%です。事業をやめる方は、いま確実に増えています。
この記事では、廃業や店じまいでホームページを閉じるときに、どの順番で手を付けるかを整理します。
【重要】サイトやドメインの閉じ方や順番を間違えると、取引先との連絡が切れたり、あなたの会社のドメインが知らない誰かの手に渡ったりします。
逆に順番さえ守れば、作業そのものは難しくありません。
結論。閉じる順番は「調べる→知らせる→サイト→メール→ドメイン」です
先に結論をお伝えします。
ホームページを閉じるときは、次の順番で進めてください。
- 何を契約しているかを調べる(サーバー・ドメイン・その他の年額サービス)
- 閉じることを知らせる(サイト上の告知、取引先への連絡先の案内)
- サイト本体を閉じる(1枚だけ残すのがおすすめです)
- メールを止める(多くの場合、廃業の翌年3月より後になります)
- ドメインをどうするか決める(手放すか、維持するか)
大事なのは4番と5番が最後にあることです。多くの方は「サーバーを解約すれば終わり」と考えますが、サーバーを先に止めるとメールが同時に止まります。そしてドメインを手放すと、そのメールアドレスは二度と自分のものに戻りません。

閉じるご相談で一番多いのは『もう全部すぐ消したい』です。
ですが「消す順番だけは先に決めさせてください」とお願いしています
最初にやるのは削除ではなく、「何を契約しているか」を特定することです
閉じ方を調べる前に、まずいま何にお金を払っているのかを一覧にします。
ここが分からないまま解約に進むと、必ず取りこぼしが出ます。
ホームページ1つを維持するために、たいてい3つ以上の契約が動いています。
サーバー、ドメイン、それにフォームやセキュリティなどの有料サービスです。
そしてこれらは、別々の会社と別の更新月で契約されていることが多いです。
通帳とクレジットカードの明細から、毎年引き落とされている名前を探す
一番確実なのは、お金の流れから逆にたどる方法です。
過去1年分の通帳やカード明細を開いて、次のような名前を探してください。
- お名前.com、エックスサーバー、さくらインターネット、ロリポップ、ムームードメイン、GMO、Xserver などの名前
- 金額が年1回だけ、数千円〜2万円程度で落ちているもの
- 制作会社の社名で、毎月あるいは毎年落ちているもの(保守費に含まれている場合)
メールの受信箱を「更新」「自動更新」「お支払い」「ドメイン」で検索するのも有効です。
更新のお知らせは必ずメールで届いているはずで、その差出人が契約先そのものです。
whois検索で、ドメインの名義と有効期限を確かめる
ドメイン(example.co.jp のような住所にあたる文字列)は、whois(フーイズ)という無料の検索で、誰の名義かと有効期限が分かります。「whois 検索」で調べて出てくるページに自分のドメインを入れるだけです。
ここで確認するのは2つだけです。
- 登録者(Registrant)が自社・自分の名前になっているか
- 有効期限がいつか(=次の自動更新がいつ来るか)

名義が制作会社になっていると、自分では閉じることも残すこともできません
whoisを見て、登録者が制作会社の名前になっていることがあります。
この場合、そのドメインの権利は自分の側にありません。請求書の宛先が自社であっても、登録者欄とは別の話です。
閉じるだけなら「放っておけば更新されずに消える」と考えたくなりますが、それは一番避けたい終わり方です。
誰の管理下にあるか分からないまま失効し、第三者に再登録される経路がそのまま残ります。制作会社と連絡が取れる間に、名義を自分へ移しておくのが安全です。
すでに連絡が取れなくなっている場合の動き方は、ウェブサイトのドメイン紛失!失効時の所有権復旧と再発防止策にまとめてあります。
「いつまでメールが要るか」を先に決めます(多くは翌年3月より後です)
ここがこの記事で一番お伝えしたいところです。
ホームページは閉じても、メールはしばらく生かしておく必要があります。
廃業しても、確定申告と取引先の清算でメールは使い続けます
個人事業主の場合、廃業した年の1月1日から廃業日までの所得について、翌年2月16日〜3月15日に確定申告をします(国税庁「廃業する場合」)。青色申告をやめる届出の期限も、やめる年の翌年3月15日です。
つまり廃業した時点から、少なくとも翌年の春までは事業の連絡が続きます。税理士とのやり取り、取引先との精算、リース・保険・公共料金の解約、それぞれに連絡が発生します。ここで独自ドメインのメールが止まっていると、相手からの連絡が届かないまま消えます。

サーバーを解約すると、サイトと一緒にメールも止まります。
サーバー解約の申し込みをする前に、「このアドレスは何月まで使うか」を決めてください。
メールを止めると、そのアドレスで登録したサービスの復旧ができなくなります
もう1つ見落としやすいのが、独自ドメインのメールアドレスをログインIDにしているサービスです。
- Googleビジネスプロフィール(Googleマップの店舗情報)
- SNSのアカウント
- ネットバンキング、通販サイト、各種の業務システム
- サーバーやドメインの管理画面そのもの
これらはパスワードを忘れたときの再設定メールが、そのアドレスに届く前提で動いています。先にメールを止めてしまうと、あとから「マップの店舗情報を閉業にしたいのに、ログインできない」という詰み方をします。
メールを止める前に、ログインIDを個人のフリーメールへ変更しておくか、少なくともそのアドレスを使っているサービスを書き出しておくことをおすすめします。JPRS(日本のドメインを管理している組織)も、廃止前にメールアドレスを使ったアカウントの削除や設定変更をしておくよう案内しています。
サイト本体は「全部消す」より「1枚だけ残す」ほうが後始末が軽くなります
サイトの閉じ方には、全ページを削除する方法と、閉鎖のお知らせを1枚だけ残す方法があります。廃業の場合は、後者をおすすめしています。
理由は単純で、閉めたあとも人は会社名で検索してくるからです。取引先、元のお客様、請求書の問い合わせ。何も出てこないより「◯年◯月をもって営業を終了しました」の1枚があるほうが、電話も減ります。古い営業時間のページだけが残って、閉めた店にお客様が来てしまう事故も防げます。
検索結果から消すには、Search Consoleの削除ツールだけでは足りません
「Google の検索結果からも消したい」という場合、Search Console の削除ツールを使う方法が紹介されていることがあります。ただしGoogleの公式ヘルプには、このツールでページがブロックされる期間は約6か月間と書かれています。一時的な非表示です。
恒久的に消すには、そのURLが404(見つかりません)または410(削除されました)を返す状態にする必要があります。ページの実体を消す、というのがそのまま正しい対処です。逆に言えば、サーバーからファイルを消せば検索結果からも自然に落ちていきます。
なお、削除したページの内容がインターネット上のアーカイブサービスに残ることはあります。これは自分では消せません。消えないことを前提に、個人情報や顧客情報を含むファイルはサーバーから確実に削除しておくのが現実的な対処です。
Googleマップは「削除」ではなく「閉業」にします(クチコミは残ります)
店舗や事務所をお持ちなら、Googleマップの情報も処理が必要です。ここは削除ではなく、閉業マークを付けるのが正解です。
Googleビジネスプロフィールで「プロフィールを編集」→「営業時間」→「閉業」を選んで保存します。Googleの公式ヘルプによれば、閉業マークを付けた場合も検索とマップに表示され続けることはありますが、閉業していることが明示されます。
一方、プロフィールそのものを削除すると、オーナーが投稿した写真・投稿・クチコミへの返信は完全に消える一方で、利用者が書いたクチコミは残り、ビジネス情報も検索とマップに表示され続けることがあります。つまり削除しても地図から消えるとは限らず、「営業しているように見える情報だけが残る」という最悪の形になり得ます。
先に閉業マークを付ける。これだけ覚えておいてください。
【重要】ドメインは最後。手放すと第三者に再登録されなりすましに使われます
ドメインの解約は、作業の中で唯一、取り返しがつかないものです。だから最後に置きます。
解約されたドメインは、一定期間が過ぎると誰でも登録できる状態に戻ります。
JPRSは、廃止したドメインが第三者に登録された場合のリスクとして、詐欺サイトや誹謗中傷サイトへの利用、同じメールアドレスを作られてのなりすまし、そのアドレスを使っていたアカウントの乗っ取りを挙げています。
これは大げさではありません。自治体のキャンペーン用ドメインが終了後に失効し、第三者に取得されて無関係な内容が発信された例が、国内で複数報じられています。会社名や屋号が入ったドメインほど、取られたときの影響は大きくなります。
解約してから再登録できるようになるまでの期間は、種類で違います
「解約すればすぐ消える」わけでも「ずっと守られる」わけでもありません。目安は次のとおりです。
- .com / .net などのgTLD⋯期限切れ後に30日間の「請戻猶予期間」があり、その後5日間の「削除保留期間」を経て削除され、他者が再登録できる状態になります(JPNIC)
- .jp(汎用・都道府県型)⋯廃止や有効期限の翌日から1か月間の状態を経て削除されます。その月の1日から20日までが登録回復期間です(JPRS)
取り戻せる期間は1か月前後しかなく、しかも復旧には高額な手数料がかかります。「うっかり失効」と「意図して解約」の区別が、外からは付かないということでもあります。
年に数千円で「取られないようにしておく」という選択肢があります
サーバーを解約しても、ドメインだけを維持することはできます。費用の目安は、.comで年2,000円前後、.jpで年4,000円前後(登録会社によって違います)。サイトもメールも止めたうえで、文字列だけを自分の名義で押さえておく形です。
判断の目安はこう考えています。
- 屋号・会社名がそのまま入っている/看板・名刺・車体・パンフレットに印刷して配った → 数年は維持を検討
- 取引先や許認可の届出書類にURLを書いている → その書類が生きている間は維持
- 誰も知らない短命なキャンペーン用 → 手放してよい
ずっと払い続ける必要はありません。印刷物が世の中から消え、検索されなくなるまでの数年を買う、という考え方です。

『閉じるのにお金を払うんですか』と驚かれるかもしれません。
ですが、看板を下ろしたあとに他人が同じ看板を掲げられるリスクを考えると、重要性が分かると思います
廃業そのものの相談は、千葉県事業承継・引継ぎ支援センターが無料で受けています
ホームページの話から少し離れますが、「やめるしかないと思っている」段階なら、先に公的窓口で相談する価値があります。
千葉県事業承継・引継ぎ支援センター(国が設置した公的相談窓口)は、相談がすべて無料です。
後継者がいない場合の引き継ぎ先探しや、専門家への橋渡しも扱っています。設備や取引先、そして長年使ってきた屋号やドメインも、引き継ぐ相手が見つかれば「閉じる」以外の道が出てきます。
あわせて、千葉県よろず支援拠点でも経営全般の相談を無料で受け付けています。ホームページの費用や解約についても、こうした窓口で第三者の意見を聞いてから決めて構いません。
【まとめ】順番さえ守れば、閉じる作業そのものは難しくありません
最後にもう一度、順番だけ確認してください。
- 調べる
通帳・カード明細・受信メール・whoisで、契約と名義を特定する - 知らせる
閉鎖のお知らせを出し、連絡先を案内する - サイト
お知らせ1枚を残し、ほかは削除する - マップ
削除ではなく閉業マークを付ける - メール
確定申告と精算が終わるまで残す。ログインIDの付け替えを先に済ませる - ドメイン
最後に判断する。屋号が入っているなら数年は維持を検討する
「何を契約しているのかが、そもそも分からない」という段階でも大丈夫です。当相談室では、いま何にいくら払っていて、どこを解約すると何が止まるのかを調べるところからお手伝いしています。閉じる方向で決まっていても、まだ迷っていても構いません。お問い合わせからお気軽にご相談ください。
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