
SNSやニュースで、参議院のホームページが約27万円でリニューアルされた、という話が広がっています。
※ 公開されている資料をひとつずつ確かめたうえで、「事実と言えそうなところ」と、「まだ未確定なところ」を分けて整理します。
2026年8月28日、参議院がホームページのデザインを刷新しリニューアルをしました。
その直後から「リニューアル費用が26万円だったらしい」という話がSNSで広がり、ニュースサイトでも取り上げられています。
この話を見て、不安になった事業者の方がいるかもしれません。
国のホームページが27万円なら、うちが出してもらった見積もりは高すぎたということ?
結論を先にお伝えすると、同じような価格と比較はできません。
理由は金額が安いか高いかではなく、公開されている資料が「何にいくら払ったのか」までは記載されていないためです。
参議院の発表、入札の公告、落札の記録を実際に読んだうえで順番に説明します。
【結論】確かなのは「デザインリニューアル業務が26万7710円で落札された」ところまで
公開資料から確実に言えるのは、次の1文だけです。
参議院が発注した「参議院ホームページのデザインリニューアル業務」という入札案件が、2026年5月29日に26万7710円で落札された。
「参議院のホームページの制作費が26万7710円だった」とは、言い切れません。
この2つは似ていますが、意味がかなり違います。
確かめられたことと、確かめられなかったことを表にします。
| 内容 | 公開資料で確かめられるか |
|---|---|
| 2026年8月28日にデザインを刷新した | 参議院の発表で確認できる |
| 平成21年以来のデザイン刷新(17年ぶり) | 参議院の発表で確認できる |
| 一般競争入札で、一番安い金額を出した会社が選ばれた | 参議院の入札公告で確認できる |
| 落札額は26万7710円 | 調達情報のデータベースと報道で確認できる |
| その26万7710円で、どこまでの作業をしたのか | 確認できない |
| 新しく追加された360度映像などの費用が含まれるか | 確認できない |
| AIを使って作ったのか | 確認できない |
下3行が空欄のまま、金額だけが一人歩きしている状態です。
参議院の公式発表に書いてあるのは「デザインの刷新」だけで、費用は載っていない
参議院が出したお知らせを読むと、変わったのは主に見た目と使い勝手だと書かれています。
費用や制作会社の名前は、ひとことも出てきません。
発表されている内容は次のとおりです。
- 「平成21年以来となるデザインの刷新」であること
- トップページなどの文字のリンクを、押しやすいボタンの形に変えたこと
- スマートフォンなど、画面の大きさに合わせて表示が変わるようにしたこと
- 「バーチャル参観」として、国会議事堂の中7か所を360度見渡せるページを追加したこと
- ドローンで撮った映像のページを追加したこと
- ホームページのアドレス(URL)は変えていないこと
ここで注目したいのは、最後の「アドレスは変えていない」という点です。
ホームページを丸ごと作り直すと、中身の置き場所が変わってページのアドレスも変わることが多く、その場合は「アドレスが変わります」という案内が出ます。
それが無いということは、既にあるものの見た目を作り替えた、という説明と矛盾しません。
ただし、発表に「土台の仕組みには手を入れていない」と書いてあるわけでもありません。書かれていないことを、やっていないことの証拠にはできないので、ここは「公開情報では確認できない」に置いておきます。

入札公告を読むと、この案件は「一番安い会社が選ばれる」仕組みだった
参議院が2026年4月17日に出した入札公告のPDFを読みました。ここに、金額が安くなった理由の半分が書いてあります。
落札者の決め方について、公告にはこう書かれています。
入札書に記載された金額が予算決算及び会計令第79条の規定に基づき作成された予定価格の制限の範囲内で最低価格をもって有効な入札を行った者を落札者とする
かみくだくと、「決められた条件を満たしている会社のうち、一番安い金額を書いた会社に決める」という方式です。
デザイン案を何社かに出してもらって、一番良いものを選ぶ方式(コンペ)ではありません。提案の中身で競うのではなく、値段で競う入札だったということです。
民間でも同じことが起きます。相見積もりを取って一番安い会社に決める、というやり方をすると、金額は下がります。ただし下がった金額に何が含まれているかは、別の話として残ります。
中身は「仕様書による」としか書かれておらず、その仕様書は公開されていない
今回いちばん重要なのがここです。公告の「調達案件の特質等」という、作業内容を書く欄には、こう書いてあるだけです。
仕様書による。
その仕様書は、入札に参加する会社が国の電子調達システムからダウンロードする扱いになっていて、参議院のホームページには載っていません。今回、一般に公開されている範囲では中身を読めませんでした。
つまり、こういうことが全部分からないまま金額だけが出回っています。
- 何ページ分のデザインを作り直したのか(トップページだけなのか、下の階層まで含むのか)
- デザインを描くところまでなのか、ページを組み立てる作業まで含むのか
- 新しく増えた360度映像やドローン映像のページの制作費が含まれるのか
- 目の不自由な方でも使えるようにする対応(アクセシビリティ)が含まれるのか
- 公開後の修正や、動作の確認までが契約に入っているのか
参考までに、ドローン映像については参議院の発表に「広報課が所蔵する映像」と書かれています。少なくともその映像は、今回新しく撮ったものではありません。
誰でも入札できる案件ではなく、資格と実績の審査があった
「26万円の仕事だから、素人でも取れたのでは」という受け取られ方もされていますが、公告を読むかぎりそうではありません。
入札に参加するには、次のような条件が付いていました。
- 国の各省庁で共通して使われる資格(全省庁統一資格)の「役務の提供等」で、A〜Dの等級に格付けされていること
- 暴力団などに該当しないという誓約書を出せること
- 参議院や他の省庁から指名停止を受けている期間中でないこと
- 仕様書に書かれた事業者の条件を満たすことを証明すること
- 実績を証明する書類を提出し、参議院の審査に合格すること
書類の提出期限は5月19日、入札書の提出期限は5月28日、開札は5月29日の14時。手続きとしては通常の一般競争入札です。
分かっていないのは「26万7710円で、どこまでやったのか」
金額そのものは、政府の調達情報をまとめたデータベースと報道で確認できます。一方で、その金額が何の対価なのかは、今のところ外から確かめられません。
もうひとつ、契約の期間にも気になる点があります。公告に書かれた履行期間は「契約締結日から令和8年12月28日まで」です。落札が5月29日、ホームページの公開が8月28日ですから、公開したあとにも契約期間が4か月残っています。
推測ですが、公開後の手直しや確認作業が契約に含まれている可能性はあります。ただしこれも仕様書を読まないと分からないので、断定はできません。
なお、参議院の年間予算は439億2691万2000円です(2026年度)。
ただしこれは議員の活動や職員の人件費、建物の維持まで全部を含んだ額なので、「439億円もあるのに27万円」という比べ方はできません。ホームページのために用意された予算がいくらだったかは、公開されていません。
「AIで作った」は、公式発表にも入札公告にも書かれていない
SNSでは「AIで作ったのではないか」という声も広がりました。
実際に、アイコンや角の丸みや帯など、AIが良く出力するパターンに似ているデザインの部分はありました。
報道でも、ホームページの中身に書かれた覚え書き(コメント)の書き方を見た人が「AIっぽい」と感じた、という臆測として紹介されています。
ですが、これについては根拠になる公開資料が見つかりませんでした。
参議院がAIの利用について説明した資料は確認できませんでしたし、(見逃しがあるかもしれませんが)私が読んだ入札公告にもAIに関する記載は見つかりませんでした。

念のため補足すると、いま多くの制作現場で生成AIは道具として普通に使われています。
AIを使ったかどうかより、出来上がったものがきちんと動いて、直せる形になっているかのほうが大事です。
ここからが本題。あなたの見積もりを、この27万円と比べても意味がない
ここまでを踏まえると、手元の見積書とこのニュースを並べて考えることはできません。片方は中身が分からない金額だからです。
比べるべきなのは金額ではなく、その金額に何が入っているかです。
同じ「ホームページリニューアル」でも、22社の見積もりが37万円から900万円まで並んだ実例がある
これは想像の話ではありません。別の政府機関が2025年12月に行った「ホームページリニューアル業務」の入札では、参加した全社の金額が公開されています。
同じ仕様書を読んだうえで、22社が出した金額はこうでした。
| 金額の並び | 金額(税抜) |
|---|---|
| 一番安かった会社 | 37万8000円 |
| 2番目 | 48万円 |
| 真ん中あたり | 170万〜190万円 |
| 一番高かった会社 | 900万円 |
一番安い会社と一番高い会社で、20倍以上の差があります。しかも発注する側が想定していた金額(予定価格)は税込608万3000円でした。

同じ紙を読んで、これだけ金額が割れます。ホームページの見積もりというのは、そういうものです。
ですから「相場はいくらですか?」という質問には、正直なところ誰も答えられません。
答えられるのは「この見積書に書かれている作業に対して、この金額は納得できるか」までです。
金額の前に、見積書の「範囲」を4つ確認してください
見積書を受け取ったら、金額の桁を見る前に、次の4つが書いてあるかを確かめてください。書いていなければ、聞いてください。
- ページ数。何ページ分を作るのか。今あるページを移すだけなのか、文章から作り直すのか
- 文章と写真は誰が用意するのか。ここが「お客様支給」になっている見積もりは、実際には自分の作業がかなり残ります
- 公開したあとの扱い。何か月まで修正してもらえるのか、不具合が出たときは誰が直すのか、月々の費用はいくらか
- できあがったものは誰のものか。契約が終わったあと、他の会社に引き継げる形で渡してもらえるのか
4つ目は特に見落とされがちです。安く作れても、あとで別の会社に引き継げない形になっていると、結局もう一度作り直すことになります。
安い見積もりが悪いのではない。危ないのは「範囲が書いていない」見積もり
誤解のないように書いておくと、金額が安いこと自体は問題ではありません。作業の範囲が限られていれば、安くなるのは当たり前です。
困るのは、次のような見積書です。
- 「ホームページ制作一式」とだけ書かれていて、内訳が無い
- ページ数が書かれていない
- 公開後の対応について、何も書かれていない
- 月々かかる費用が、何に対するものか書かれていない
この形だと、高くても安くても、あとから「それは別料金です」という話になります。実際、そこでこじれたご相談を千葉県内の事業者の方から何度もいただいています。
今回の参議院の件が分かりにくくなっているのも、理由は同じです。金額は公開されているのに、範囲を書いた紙が公開されていない。だから誰も評価のしようがない、という状態になっています。
見積書の読み方に迷ったら、契約する前に第三者に見せてください
見積書を見て判断がつかないときは、契約書に印を押す前に、その制作会社とは関係のない人に見てもらってください。
当室でも、見積書と提案書を拝見して、「この金額に何が含まれていて、何が含まれていないか」を整理するご相談をお受けしています。作り直しをすすめるためのものではありませんので、そのまま進めて問題なさそうなら、そうお伝えします。

見積書を1枚お送りいただければ、どこが書かれていないかをお伝えできます。(金額の高い安いだけの話ではありません)
今回の件でお伝えしたかったのはひとつだけ。
ニュースやSNSで流れる金額と、あなたのサイト制作の見積金額は、そもそも比べられるものではありません。
重要なのは、その金額に対する制作範囲と内容です。
出典
- 参議院「参議院ホームページ、17年ぶりデザイン刷新!」(令和8年8月28日)https://www.sangiin.go.jp/jpn/annai/jimukyoku/r8/r080828-2.html
- 参議院「参議院ホームページのデザインリニューアル業務」入札公告(令和8年4月17日、PDF)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/choutatu/24buppin-ekimu/pdf/kaikei-r08ippan-26.pdf
- 参議院「物品・役務の発注、契約情報(会計課所管分)」https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/choutatu/24buppin-ekimu/kaikei-24hacchuu.html
- 会社情報DX「参議院ホームページのデザインリニューアル業務の落札結果」https://companyinformation.jp/awards/2095503/
- ITmedia NEWS「参議院サイト、17年ぶり刷新の裏で『制作費26万円』が話題に 落札結果から判明」(2026年8月31日)https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/31/2000000959/
- 参議院「よくある質問」(参議院の予算額)https://www.sangiin.go.jp/japanese/goiken_gositumon/faq/index.html
- 港湾空港技術研究所「海上・港湾・航空技術研究所ホームページリニューアル業務」入札結果(令和7年12月2日開札、PDF)https://www.pari.go.jp/about/procurance/pdf/bid/65febd401307c0520acb60d718297683bf304708.pdf
本記事は2026年8月31日時点で公開されている資料をもとにしています。仕様書など未公開の資料が今後公開された場合、判断が変わる可能性があります。
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